2010年06月22日

チチコフ再び

6月20日。職場関係の仕事やその他いろいろたまっている仕事をしているうちに一日が過ぎていく。よんどころない事情というやつで、他人のわがままにつきあわざるをえなくて自分の時間が奪われることが悲しい。世の中は相身互い、袖振り合うも多生の縁と言うではないか、それぐらい大目に見なさいと怒られそうだが、私はそんなに立派な大人じゃありません。

結局4時半に家を出て、いつもの駅に向かう。アンジェラとその友だちのマーシャが待っていた。二人とも日本語ができるのだが、ロシア語で世間話をしつつ、中央人形劇場に向かう。意外なことに二人とも中央人形劇場に行くのは初めてだという。アンジェラもマーシャも生まれてから少女時代をシベリアの町で過ごしたからだ。モスクワにも就職してやってきたのだから、それほど多くの劇場に通っているわけではない。そうしてみると、生まれながらのモスクワっ子というのは恵まれているのだな。

今日は「チチコフのためのコンサート」である。私は2度目だが、アンジェラたちは初めての人形劇体験だ。いったいどんな反応を示すのだろうかと興味津々。

やはり面白い芝居である。かつて小説(翻訳)で読んだ『死せる魂』はそんなに面白いと思った記憶がない。いや、面白いところはたくさんあるのだけれど、『ディカーニカ近郊夜話』その他の短編に比べると、なんとなく冗長な感じがして、再読しなかったのだ。ところが、今回この芝居を2回見て、『死せる魂』がこんなにも笑える面白い話だということを知った気がする。今度は『死せる魂』を原文でちゃんと読まなければ、と反省した。

一方、若いロシア女性2名は、終始ケラケラ笑いながら見ていた。終演後の感想は、ものすごく面白くて、人形劇がこんなにすばらしいものとは知らなかった、ということである。そうでしょう、そうでしょう。

しかし、今回も休憩時間を入れて4時間の芝居である。疲れたし、アンジェラは終電が早いしで、全員すぐにお別れである。

さて、実は私はこれからが本番で、地下鉄に乗るとそのまま終点のマリイノに向かった。出口でレートフともう一人のセルゲイが待っていた。そのまま浄水場の上にあるレストラン「白鳥」へ。カラオケ・レストランで、先ほどまでレートフたちもカラオケをやっていたという。このレストランで働いているPAのエンジニアでベーシストのヴァジムが店から出てきた。これから必要なものなど3人が相談し始める。

すぐそばのスーパーで肉、野菜、ビール、パン、チーズ、その他を買い、ヴァジムの偽トヨタ中国製ジープに乗り込んだ。これから約200キロ先の目的地に向かって出発。すでに深夜0時を過ぎている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Концерт для Чичикова с оркестром
http://www.puppet.ru/?pageId=137
posted by masa at 06:38| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月20日

人形ギャラリー

6月19日。9時に一度起きるが、身体が重くまた寝てしまう。今日はなんだか楽しい夢を見た気がして、11時過ぎに再び目覚める。今度はすっきりしている。いくつか調べものをしながら簡単に朝食を済ませ、いつも通り本を抱えて、いつも通りに郵便局へ。今日は多く持ってきすぎた。5キロをかなりオーバーしている。5キロ以内におさまるように調整したら、5冊も余ってしまった。

5冊とはいえ、カバンがかなり重い。このままでは確実に腰痛になるので、一端家に帰ることにした。途中でトイレットペーパーがきれかかっていることを思い出し、いつものスーパーに立ち寄り、サクランボのジュースと一緒にトイレットペーパーを買った。家でしばし休憩し、水分を補給。新しいトイレットペーパーがあるので、ゆっくりとトイレも済ませる。一端帰ってきてよかった。

再び地下鉄に乗り、オクチャーブリスカヤ駅へ。今日の目的地は中央芸術家会館である。ゴルドフスキー氏が推薦してくれた人形ギャラリーがそこにあるのだ。中央芸術家会館はトレチャコフ美術館新館と同じ建物にある。もう何度も来ているところなので、お気に入りの散歩コースのようなものだ。

中央芸術家会館に入ってすぐ、入り口の近くにヴァフターノフ人形ギャラリーはある。今は家族向けの企画ということで、可愛らしい人形ばかりが展示されている。アクの強い作品はまったくない。しかし、いいコレクションである。子どもと一緒に来たら、きっとよろこぶだろう。雑誌「人形の世界」の最新号も2冊あった。買おうと思ったが、ここに来るまでに腰が痛くなっていたので、次回にする。

とにかくまた来ることにして、ついでにいくつかの展覧会を見て回る。いい作品がたくさんあった。驚いたのはスタス・ナミンの絵である。え?あのロック・シンガーがこんな絵を描くの? 同姓同名の画家なんだろうか。まだ確かめていないが、ハイパーリアリズムのすごい絵である。同じギャラリー企画でドミトリイ・サンジエフとジャムソ・ラドナーエフの作品もあり、どれもとてもよかった。

ニコライ・ブローヒンというペテルブルグの画家の大規模な展覧会もやっていた。とにかくうまい。とにかく量産している。とにかく分かりやすい絵である。きっと、かなりの人気作家である。タブローって、これだからずるい、と思う。嫉妬である。

1930−70年代に公式芸術の世界で数々の作品を残した画家たちの展覧会もあった。これが予想以上によかった。絵は結局、見る人の好みによって個別の価値が生じるのだけれども、私個人の好みではどれもとてもいい絵なのだ。美術史に残るとか、美術市場にのるとか、そういうことではなくて、ああ、この絵を手元に置きたいな、と個人的に思う作品が結構あるのだ。非公式芸術を考える上で、こうした公式芸術の人々のこともしっかり把握しておかなければ、偏見に満ちた研究になってしまいかねない。気をつけなければと反省しきり。

エヴゲーニヤ・インフェリツィーナという若い作家の個展があった。下手クソである。いえ、ヘタウマである。いや、独自の世界である。いいえ、もう単に気に入ってしまった。たまたまカタログも売っていたので、買ってしまった。800ルーブル。ちょっと高い気もするけれど。惜しくは感じない。

もう一度、人形ギャラリーをのぞき、人形たちをながめる。幸福な光景である。来週は違う企画になるはずなので、また必ず来ることにしよう。

ノヴォクズネツカヤへ向かう。ドムの上にある人形ギャラリーに立ち寄ろうと思ったのだ。しかし、ドムは閉まっていた。なぜだ。確かに今日はライブがない日だが、間が悪かったのか。仕方がないので、記憶を頼りに Ad Marginem へ向かう。しかし、まったく見つからない。どうやら移転したらしい。またも仕方ないので、もう腰も痛くてしょうがないし、家に帰ろうと思ったところ、近くにCDショップがあることを思い出したので、探してみたら、これはあった。品揃えは豊富。ジャズ・コーナーも充実している。しかし、肝心のロシアのジャズがないのだ。なぜだ! こんなにアメリカのものはたくさんあるのに、その上「日本製」コーナーまでわざわざ設けているのに、なぜ自国の音楽をないがしろにするのだ! こういった状況はこのCDショップだけではないので、仕方ないと言えば仕方ないことなのだろう。消費者のニーズに合わせて商売をするのが当然なのだから。

代わりにアニメーション「月への飛翔」のDVDを見つけた。さらに「アニメ・ガイド」シリーズもあった。日本のアニメを紹介するDVD付きの雑誌である。しかも安い。SAMURAI7 と鬼塚の入った号を買った。もうすでに30号以上発行されているらしい。お金に余裕があったら、バックナンバーも買おう。

脈絡のない展開だ。人形愛好家やアニメのオタクにもそのうち会う機会もあるだろうけれど、今日はとりあえず疲れたので帰ることにしよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Кукольная Галерея Вахтановъ
http://www.artdolls.ru/

Галерея «Ханхалаев»
http://www.khankhalaev.com/

Евгения Инфелицина
http://www.infelicina.com/
posted by masa at 02:41| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月19日

ART4.RUとマラー/サド

6月18日。タバコの煙に包まれて目が痛くてしょうがない夢を見て、朝早く目が覚める。こうなると、もはや病気である。たぶんこの2ヶ月近くで相当肺が黒くなっているのではなかろうか。

朝食を食べて早く出かけるつもりが、ちょっと横になったらまた眠ってしまった。10時過ぎに再び目が覚め、大急ぎで荷物をまとめ、ゴミ出しをして出かける。今日もまた5キロの本をかかえて、いつもの郵便局へ。窓口の前にまた誰もいない。すぐに郵送の手続きは済み、大急ぎで中央人形劇場へ向かう。

約束の時間に10分遅刻したが、ナターシャさんはまだ来ていない。電車の事故で遅れているという。仕方がないので、人形と一緒に自分の写真を撮ってもらったり、全部撮影の終えた資料をもう一度チェックしたりした。ナターシャさんの到着。そこで、最後に気になっていた人形ビバボについて質問する。オブラスツォーフが子どもの時に初めて手にしたのが日本の人形ビバボだった。その人形の写真とまだ残されているかもしれない人形の頭部を見せてくれと頼んだ。ナターシャさんは頭部がある記憶がないという。しかし、人形の写真は資料の棚からあっという間に探し出してくれた。いつ撮影された写真か分からないのだが、たった1枚残されている。これもまたデジカメで撮影する。

ナターシャさんは明日から夏休みに入り、モスクワを離れる。会えるのは今日が最後である。ということで、ケーキ、キュウリ、チーズ、ウォッカがすぐに用意され、職場でいきなり小宴会が始まる。Hさんとヴァロージャと4人だけの簡単な宴会である。昼間のウォッカはできるだけ避けたいのだが、最後となれば仕方ない。1杯しっかり頂戴する。すぐに頭が熱くなる。ナターシャさんと別れの挨拶を交わし、しばらくして劇場を出た。

歩こうかと思ったが、ウォッカが入った状態では危険なので、一駅だけだが、地下鉄で移動する。文学大学裏の通りをひたすら歩き、先日入り損ねた音楽書専門店に立ち寄る。目的はロマン・ストリャールの新刊本でピアノの即興演奏のための教科書である。しかし、出版社がペテルブルグのため、まだモスクワまで届いていないらしく、書店員もそんな本は見たこともないという。仕方がないので、ジャズ関係の本が置いてある一角を物色する。おお、名著『ソビエト・ジャズ』(メドヴェージェフ編)の古書があるではないか。すでに持っていて何度も参照している本だが、後日買うことにしよう。初めて見る本が3冊あったので、すぐさま購入。楽譜や教科書もたくさんあるが、今回はやめておこう。

書店から歩いて10分ほどのところにあるミュージアム「ART4.RU」に到着。毎週金曜日にしか開いていない現代美術のミュージアムである。オリガが現代美術ならここに行くしかないわよ!と力説していたところだ。彼女のお薦めの通りである。ものすごく質の高い作品群。トレチャコフ美術館新館とこのミュージアムを見れば、ロシアの現代美術のほとんどすべてが把握できるのではなかろうか。とにかく内容がすばらしい。私の大好きなブルスキンの作品もたくさんあり、クリークのコーナーも充実している。いったいこれだけの作品をどうやって収集したのだろう。オーナーの見識の高さをひしひしと感じる。

本の品揃えもいい。ミュージアムのカタログとクリーク展のカタログがどちらも定価の半額だったので、買ってしまう。しめて2,000ルーブル。安いけれど、すごく重い。両手で抱えて持っていこうと思ったらミュージアムのロゴの入った紙袋に入れてくれた。気が利くなあ。ガレージなんかより、断然いい。ここにはまた何度も足を運ぶことになるだろう。

地下鉄を乗り継ぎ、タガンスカヤへ。しかし、駅を降りても地図の様子とまるで違う。道行く人に2回も尋ねて、ようやく目的の場所にたどり着く。タガンカ劇場である。出口さえ間違えなければ、駅を出てすぐの所だったのに、まったく違う出口から出てしまったために、道に迷って大汗をかいてしまった。

受付で尋ねるとレートフがしっかりと3枚の無料入場券を用意してくれていた。しかもとても見やすい席である。感謝。今日の演目はリュビーモフ演出の『マラー/サド』である。2002年にタガンカ劇場が来日し、静岡芸術劇場でこのお芝居を上演した時は、レートフが来るというのでわざわざ稚内から観に行ったのだ。行った甲斐があり、それはそれは面白い芝居だった。それ以来もう一度見たいと思っていた芝居なのだ。

舞台は精神病院。鉄格子の向こうで役者たちが癖のある患者たちを演じる。マルキ・ド・サドがマラー暗殺の劇を書き、それを患者たちが演じるという趣向である。しかもミュージカル。患者たちは歌い、踊る。役者兼音楽担当のミハイル・ジューコフ(パーカッション)、タチヤーナ・ジャ−ノヴ(キーボード)はずっと演奏したままである。レートフはフルート、アルト・フルート、ピッコロ、ソプラノ・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックス、バス・クラリネット、ザフーン、おもちゃの笛など、ひっきりなしに持ち替えて、ほとんど休まず吹いていた。アクロバチックな演技の連続。男女の濃厚なダンス、タップ・ダンス。みんなすごく歌がうまい(当たり前だ)。主演女優はバイオリンとトランペットも演奏する。エネルギッシュで、とにかく面白い。見た後でとても元気になるお芝居である。

重い本を抱えているけれど、心は軽い。人を元気にしてくれる美術や演劇がこのモスクワにある限り、喫煙者ぐらいは大目に見てやろう。そう思った矢先に目の前で歩きタバコ。これだけは許し難い。早く帰って芝居を反芻しよう。

----------------------------------------

ART4.RU | музей актуального искусства
http://art4.ru/

Марат и маркиз Де Сад
http://taganka.theatre.ru/performance/marat/

posted by masa at 04:58| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月18日

ガレージと念願のチェニ!

6月17日。昨晩は早く寝たので、今朝は早く目が覚めるが、眠気が残っている。蕎麦のお粥をつくるつもりでいたのに、気がついたらロシアの韓国企業が製造販売しているインスタントラーメンを食べてしまう。辛くて目が覚めた。

今日も5キロ以上の本をかかえて、いつもの郵便局へ。窓口がちょうど休憩時間で10分ほど待たされた。小包を5キロちょうどにすると手頃な郵送料になることを知った。今度からは気をつけよう。ちょっと腰痛気味だったので、カバンが軽くなったところで、一度家に引き返し、軽くパンを食べて一休みし、昼のラッシュ時間をさけて再び出かける。

ノヴォスロヴォツカヤ駅から歩いて約25分。今日の目的地チェニを探すが、道を間違えて、なかなか見つからない。通りを1本勘違いしたことに気づき、引き返して、ようやく見つけた。開演時間までまだ2時間以上ある。そこで、予定通り、チェニから歩いて10分ほどのところにあるアートスペースに向かった。

現代文化センター「ガレージ」は2008年秋、カバコフのレトロスペクティヴが開催されて以来なにかと話題のところで、気になっていたのだが、なんとなく行きそびれていた。昨日も雨に降られて行き損なったし、なにか自分には合わない場所のような気持ちになっている。実際、中に入ってみると、なかなかいい空間なのだが、なんだかとっても「アート」ですよという雰囲気が気に入らない。入場料も200ルーブルと決して高くはないのだけれど、ヴィンザヴォートなんかタダだぞ。あ、いえ、200ルーブルは当然でした。マーク・ロスコの展覧会をやっているのだ。

モスクワでマーク・ロスコの作品をまとめて見られるなんて信じられない。しかも、いい作品を展示している。授業でも学生たちには写真で見せているものの、本物はやはりはるかにいい。大きな作品の前に立つと絵の中に吸い込まれそうだ。

ロスコは厳戒態勢の密室空間で展示されていたが、建物の中央で展示されていたのが、カールステン・ヒョーレルの巨大なキノコの作品。複数のキノコを結合させて出来上がった奇妙なキノコが5点。これが意外にかわいいし、見ていて飽きない。ああ、触りたい。

本来の目的であったショップがちょうど改装中で、本がまったく売られていない。5月に開催されていた展覧会のカタログが欲しかったのに…。××も××も買おうと思っていたのに…。仕方がないので、喫茶コーナーで緑茶を飲んで一休み。ソファがとても居心地がいい。ガレージの巨大な空間とキノコたちをぼんやり眺めながら、あまり悪いことは考えないようにだらだらと1時間近く過ごす。お茶代は120ルーブル。普通と言えば普通だが、中央人形劇場のビュッフェの数倍もするので、なんだかやっぱりお金持ちのための場所なんだなぁ、とちょっと不機嫌になってガレージを後にした。たかが本を買えなかっただけで不機嫌になるお客もよくありませんが。

そして、ついに劇場チェニに到着。念願のチェニ。昨年、飯田のフェスティヴァルで来日した時には、仕事が山積みでとても観に行くことができず、ものすごく悔しい思いをしたのだ。日本の公演の時は影絵だったそうだが、今日見るお芝居は、この劇場の中でしか見ることができない。しかも1回の公演で見ることのできる観客数は6名まで。予約は数年先まで一杯で、普通はなかなか見ることができないのだが、今回私は中央人形劇場で調査をしている人形劇関係者であるということで、劇場側がスケジュール調整してくれたのである。もうひとつは劇場のイリヤ・エッペルバウムがリューダと友人で、リューダの口入れもあったらしい。何事も人間関係でうまく進むロシア文化界ならではのことである。

今日の観客はお母さんと二人の子ども、リューダ、すでに何度かチェニを見たことがあるHさん、私の6名。お芝居の前にテーブルにつき、お茶とお菓子を頂きながら、今日のお芝居の主人公たちである小人たち「リリカーン」のお話を聞く。リリカーンたちの来歴が語られ、彼らがなぜ劇場チェニにいるのか、そのお話がビデオ映像で紹介される。そして観客にリリカーンの国へのビザが手渡される。お土産を買いたい人は30ルーブルでリリカーンの国の硬貨3枚に両害してくれる。その硬貨は直径2ミリほど。これをまた小さな宝石箱に入れて、手渡してくれる(この箱は後で返却する)。

ビザとお金を持って奥の部屋に通される。おお! 八畳一間ほどの空間、壁全体にリリカーンの国の地図が描かれている。正面には高さ1メートル50センチほどの劇場。反対側にはリリカーン博物館。リリカーンの本屋でリリカーンの詩集が売られている。これを先ほどのリリカーンの硬貨で購入する。壁に描かれた地図の各所に赤いランプが点灯し、その場所についての説明がなされる。劇場の正面玄関からお客をもてなす食事と飲み物が出てくる。前菜とケーキにジュース。しかもお皿は直径2センチもない。小さな小さな食事と飲み物を頂き、こうして観客は完全にリリカーンの世界にどっぷりである。

劇場の前に椅子が置かれ、6名が座る。リリカーン語は普通誰にも分からないので、同時通訳のイヤホンが渡される。そして劇場の窓から中を覗くのだ。劇場の中央の舞台でお芝居がはじまる。しかも人形劇である。題名は「二本の木、あるいは、うるわしの姫と砂金王のロマンチックな恋、オレンジの木に住んでいる意地悪でずる賢い黄色い小人および愛し合う者たちを引き裂く荒野の残忍な魔女の悲劇的な物語」。この題名の通りの物語である。人形は小さいこと、小さいこと。劇場の観客たちも全員違う衣装と顔。オーケストラもちゃんと動いて、荘厳な音楽を奏でる。次から次へと役者たちが登場。劇場の中の劇場の舞台にさらにまた劇場が登場する。すごい、すごい。

お芝居そのものは45分だが、その前の演出からして懲りにこっているし、芝居の構成、美術がとにかくすごい。人形の演技もすばらしい。あの小さな人形でこんなすばらしい劇的空間をつくりだせるのだ。芝居の後、イリヤ・エッペルバウムとも話すことができた。今回の芝居だけでなく、創意工夫に満ちた独創的な演劇をたくさんつくっている人だということが分かった。

通常の切符代は6,000ルーブルだが、関係者価格で3,000ルーブルと聞いていたので、払おうとしたら、いいえ今回はご招待なので無料ですと言う。ひたすら恐縮する。こんなにすばらしいものを見せて頂いてタダではバチがあたる。せめて少しでもお礼をと言う訳ではないが、これまでの芝居のDVDが3タイトルあったので、全部購入した。

とにかく機会があったら、また何度でも来たい劇場ができたことが嬉しい。

リューダと歩きながら地下鉄駅に向かう。私が一押しの演劇関係者がいるけど会いたい? もちろん。それから娘夫婦と孫が一緒に生活しているから家の中がグチャグチャだけど、それでもよかったら明日遊びに来て。いや、それは私がお孫さんの本来の家にいるから、そうなったのであって、全然気にすることではありません。子どものいる家はみんなそんなものです。喜んで遊びに行きますよ。じゃあ、明日また連絡を頂戴。

駅の近くの日本食の食材店にリューダが案内してくれた。あるある。かなりの品揃え。おせんべいも何種類か。しかし、日本で買う5倍以上の値段。一体誰が買うのだろう。豆腐もある。しかし、これだけいろいろあるのに、なぜか納豆だけがないのよ、私は納豆が食べたいのに!と嘆くリューダ。今度モスクワに来るときは納豆の作り方を書いたものと藁を持ってきてあげよう。

リューダと別れた後、久しぶりにロスチクでチキンカツバーガーとビール。たまに食べる肉がおいしいと感じるのだから、タンパク質が足りていないのかもしれない。明日は大豆の缶詰を買おうと思う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Центр современной культуры «ГАРАЖ»
http://www.garageccc.ru/

Марк Ротко: В неведомый мир
http://www.garageccc.com/exhibitions/13065.phtml

Гигантские трехчастные грибы
Карстен Хёллер
http://www.garageccc.ru/exhibitions/13621.phtml

Театр "ТЕНЬ"
http://tttttttttt.ru/

ДВА ДЕРЕВА или ТРАГИЧЕСКАЯ ИСТОРИЯ
http://tttttttttt.ru/index.php?id=190

LILIKAN`S MUSEUM of THEATRICAL IDEAS
http://tttttttttt.ru/index.php?id=102
http://www.metacafe.com/watch/2275131/lilikan_s_the_great_royal_academic_theatre/

posted by masa at 05:46| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月17日

雨の中くじける

6月16日。目が覚めたら、目がものすごく痛い。昨日のタバコのせいだ。目を水でじゃぶじゃぶ洗い、目薬を点眼。憂鬱な気分のまま蕎麦のお粥をつくり、黙々と食べる。

日本から持ってきた仕事がいくつかあり、それを黙々と片付けているうちに昼過ぎ。外はすっと雨である。出かけるのが面倒くさい。ガルジェイからメールが届き、昨晩送った原稿のファイルは無事に開き、読めたそうだ。そうすると、今日も劇場に行かなければならない。

本をカバンと手提げにつめて出かける。またトゥルゲーネフスカヤの郵便局へ行く。今日も窓口には誰もいない。珍しいこともあるものだ。全部で重さが6キロ近くもあった。郵送料は約7,000円。うーん、ちょっと痛いところだ。しかし、仕方ない。ネットで買ったらもう少し高くつくので、まだましだ。

中央人形劇場に着くと、案の定、ガルジェイが私の原稿を手直しして待っていた。いかにもロシア語の手堅い表現に直してくれていて、ひたすら恐縮する。なぜ自分はこのようなロシア語をすらすら書けないのでしょう、ああ、情けない、とガルジェイに言うと、大丈夫、大丈夫、本当に微妙な違いなんだから、それより僕が文章を直したせいで意味が違っていたりしない? いいえ、もう十分すぎるくらい立派な文章です。ああ、ネイティヴがいつも身近にいてくれたら、どんなにいいことだろうとあらためて思う。

昨日スキャニングを頼んでおいた画像データをもらい、劇場を出た。ちょうど雨もあがったので、さて、中央芸術家会館に行くか、それともガレージに行くかで迷った末、明日行くチェニが近くなので、その場所を確かめるついでにガレージ(ギャラリ−)に行くことにした。初めての道なので、心許ない。あと10分ほどで着くかなというところで、一度やんでいた雨がまたポツポツ降り出し、すぐにどしゃ降りに。軒下に飛び込み様子を見るが、すぐにやみそうもない。すっかりやる気をなくして、もう帰ることにする。傘をさし、歩くが、靴がすぐにびしょびしょになる。ノヴォスロヴォツカヤ駅に着いたときには、膝から下がずぶ濡れになっていた。

いつもの駅に帰り着き、いつものスーパーに行く途中、気になっていたDVDショップに立ち寄った。「罪と罰」の連続テレビドラマとなにやらB級のSF映画を見つける。そしてアニメ・コーナーを見ると、おお、日本のアニメが山のようにある。しかし、ワンピース以外は知らないアニメばかりだ。うーん、私は時代についていけていないのか。いちばん欲しかったDETH NOTE が見つからなかったので、結局、XXXHOLiC とセイラームーンSを買った。絶望先生もあったが、また今度にしよう。近所に意外に面白い店があったのが、今日の一番の収穫か。

帰宅時間が早い分、夕食も早くすみ、いろいろな雑事もいっぺんにこなせて、平穏無事な一日でよっかた、よかった。
posted by masa at 02:48| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月16日

サックス・マフィア

6月15日。今日は夜が長いので、それに備えて力を温存しなければならない。あれこれと考えているところに電話。劇団チェニからだ。お芝居を見せてもらえる日程を調整中で、いくつか都合のいい日について答える。また連絡をくれるとのこと。うまくいくといいのだが。

いちばん重い展覧会図録と数冊の雑誌を持って出かける。いつも利用するトゥルゲーネフスカヤの郵便局に向かう。窓口に誰も並んでいない。珍しい。本は全部で2,587グラム。船便で郵送料は761ルーブルだった。まあまあか。おそらく残りの本を全部船便で送っても2万円ぐらいかかるだろう。

中央人形劇場に行き、残りの資料を撮影する。2箱もあるのに、中身はほとんど同じチラシ等。50枚程度の撮影で無事終了。これで関係資料のすべてを撮影したことになる。めでたい。後はいくつか補足的な仕事が残っているだけだ。

例の原稿のデータをガルジェイに渡す。ワードでファイルを開こうとするが、文字化けしてしまう。文字コードに問題があるらしいのだが、よく分からない。帰宅したら、いくつか別の形式のファイルにして電子メールでガルジェイに送ることにする。

仕事を早く切り上げ、いったん家に帰る。今朝の残りのカレー・スープを食べる。お腹いっぱい。メールのチェック、楽器の用意などしているうちにでかける時間になる。今日もまたプロジェクト・オギだ。出演はサックス・マフィア。そして私もゲスト出演するのだ。開演は10時。帰りの地下鉄がとても心配。

オギに着いたら、詩の朗読会をやっていた。ものすごく見たいのだけれど、ちょっと覗いたら、タバコの煙がモウモウと霧のようにたちこめている。背筋が凍る。中は見えないが、出口付近の風通しのいいところに腰掛けて、朗読の声だけ聞く。面白いなあ。その出口付近でも若者たちがぷかぷかタバコをふかしている。しんどい。

朗読会が終わり、ライブの開演予定時間まであと20分。中に入るとまだ煙い。エドゥアルド・シフコフが声をかけてきた。1年ぶりだ。もうみんな楽器を中に入れてある、ステージ左横だよ。はいはい、私も準備します。もう一人のメンバーであるニコライ・ルバーノフにレートフが紹介してくれる。でかい人だなあ。

その巨漢のルバーノフはバス・サックス、テナー・サックス、ソプラノ・サックス、バス・クラリネットを吹く。シフコフはバリトン・サックス、テナー・サックス、アルト・サックス、レートフが今日はバリトン・サックスとC管サックスである。サックス・マフィアのプログラムはしっかりとできている。と言ってもテーマと大体の構成だけで、あとは全員即興である。バス・サックスとバリトン・サックスで3人が一度に演奏するところが何度もあり、これがなかなかの迫力だ。ルバーノフはバス・サックスをばりばり吹くだけでなく、テナーもソプラノも抜群にうまい。そのうえバスクラもすごい。

もちろんシフコフもレートフもばりばりである。トリオで1時間近く吹きまくっていた。なんて体力なんだろう。といったところで、私が呼ばれる。私がソプラノ・サックスを吹き始めると、待ってましたとばかりに3人がバスとバリトン・サックスを思い切り低温で囂々と吹きまくる。そうきましたか。こちらもひたすら吹きまくる。そのまま最後までいってしまい、終わるとお客さんは結構喜んでいた。では、もう一曲。今度は、レートフとのかけあいをしながらの即興で、へんてこな曲で面白かった。お客はもっとやれという。じゃあ、と4人で顔を見合わせて、今度は4人全員がまったく別々のメロディーを吹くという展開。合っているような合っていないような、これはこれでとても面白いセッションだった。

あれだけ全力のステージをした後で、私も入れてさらに3曲演奏してしまうサックス・マフィアの底力には驚嘆した。ルバーノフはペテルブルグ、シフコフはヴォログダ、レートフはモスクワに住んでいるので、サックス・マフィアのライブはそう多くはない。今回の演奏は1年ぶりということなので、一緒に演奏させてもらえたのは本当に幸運なことである。

楽器の数が多いので、みんな片付けが大変だ。私は終電が心配なので、先に失礼することにした。知り合いが酔っぱらっている。今度のライブはいつだというので、22日の予定と言うと、よし絶対に行くぞとのこと。はいはい、是非来てください。私はとにかく帰ります。終電は1時だからまだ大丈夫だよ。ごめんさい、不慣れなので、失礼します。おやすみなさい。

外は雨。急いでいるので、傘をささずに駅へ。車両に飛び乗り、一息つくと、体中ものすごく臭くなっていることに気づく。ああ、タバコが。

帰宅するなり、ファブリーズをかけまくり、シャワーを浴びて、水を飲み、やっと落ち着く。メールをチェックすると、チェニからの返答。17日ならお芝居をみせてくれるという。おお、やった。ちょうど都合のいい日だ。不快なタバコのこともすっかり忘れていた。

------------------------------------

САКС-МАФИЯ в проекте оги на Потаповском
http://sergey-letov.livejournal.com/58222.html

САКСОФОННАЯ МАФИЯ
http://www.letov.ru/sax-mafia-1.html
posted by masa at 07:51| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月15日

サインホ・インタビュー

6月14日。こう毎日寝汗をかいていてはそのうちベッドが腐ってしまうのではないかという恐怖感にかられる。もうずいぶん昔、実際にベッドの底の木の部分が腐ったことがあるのだ。さすがにあの頃ほど若くはないから、そんなに新陳代謝は激しくないだろうが、他人から借りているベッドを腐らせるわけにはいかない。布団を上げて、シーツを洗濯した。ファブリーズもシュッシュッ。

気持ちよくなったところで、昨日の原稿の残りを仕上げ、さあ、今日はギャラリーに行って資料収集だ、と意気込んだところで電話が鳴った。実は居留守をつかい、電話に出なかった。そして、着替えて本当に出かけようとしたところにまた電話。さすがに出ないわけにはいかない。

サインホだった。今から暇だけど、インタビューするならいいわよ! ええと、はい。私も暇ではあります、ギャラリーに行こうかなと思っていたけど、それは別の日でもいいのです。じゃあ、どこで会う? いま××にいるのだけれど。ええとですね。できればですね、あまり地下鉄に乗りたくないので、私の家の近くまで来てもらえますか? いいわよ、じゃあ、1時間後ね。

1時間後か! 大急ぎでスーパーに行き、新しいパン、チーズ、ソーセージ(普段はまったく食べない)、ワイン(普段はまったく飲まない)、サラダを買い、家に戻り、すぐさま近所の地下鉄までサインホを迎えに行った。スーパーマンのシャツを来たサインホが地下鉄の出口から出てきた。ちょっと面食らったが、妙に似合っている。

アパートに着くなり、パソコンを目にとめ、インターネットが使えるの?と言う。はい、使えますよ。メールをチェックしたいのだけれど、いいかしら? はい、どうぞ。その間、お茶を入れる。

ひとしきりして、インタビューを始める。録音機とビデオカメラを同時に使う。1)ソ連時代の音楽活動のこと、2)日本の最初の印象のこと、3)絵画の創作について、4)現在と今後のプロジェクト、5)トゥバの音楽状況、6)彼女の詩について、等々をきく。1時間半以上、サインホはひたすらしゃべる。よくしゃべるなあ。自分のことはいくらでもしゃべるのだなあ、などと馬鹿なことを考えながら聞いていた。最後の詩の話になるとニルヴァーナとかインド哲学にまで言及し、もうさっぱり分からない。でも、すごく面白かった。

ビデオのバッテリーも切れたので、インタビューは切り上げ、夕食をつくることにした。その間サインホはトゥバのニュース・サイトを見ていた。豆のカレーライス、サラダ、チーズ、ソーセージ、パンを食卓に並べる。辛口のカレーだけど大丈夫? これぐらいなら平気、インドでは毎日これより辛いのを食べていたし。このカレーライス美味しいわね。ああ、つくった甲斐がありました。

あれこれ世間話をしたり、日本の私の家族とスカイプで話したり、で、なんとなく時間は過ぎてしまい、サインホがリューダのところに電話をした。リューダはすでに夏休み体勢なのか、ダーチャ(別荘)に行っているという。しかし、ターニャが家にいるので、サインホはこれからターニャのところに行くという。リューダとターニャの住んでいるチェルタノーフスカヤまではここから車で10分程度だ。

アパートを出て、今後の予定などききながら、車が多く走る通りに出る。タクシーは簡単につかまる。じゃあまたね。連絡を取り合いましょう。有り難う、さようなら。

すぐそばの店でビールを買って、家に帰る。残ったカレーで2回分のスープになりそうだ。シーツもほとんど乾いている。よく分からないけれど、それなりに充実した一日が終わろうとしている。
posted by masa at 03:42| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月14日

原稿だけの一日

2月13日。アンジェラから電話があり、今日一緒にコローメンスカヤの公園へ行く予定でいたけれど、都合が悪くなりましたという。入院中のボーイフレンドが検査があり、やはり一緒にいなければならないのだそうだ。彼はキューバ人で、しかもロシア語ができないので、アンジェラがいて、何かと通訳しなければならないのだ。母語のロシア語以外に、英語、日本語、フランス語、スペイン語(学習中)の話せるアンジェラならではの話である。

公園で気持ちよくアンジェラと過ごしたくもあったが、モスクワ滞在も残り2週間となったいま、そんなにのんびり遊んでもいられない。とにかくやれることをどんどんやらなければ、と思いつつ、とりあえず床に掃除機をかけ、ぞうきんがけをした。

床がきれいに気持ちよくなったところで、雷の音。外がいきなり暗くなり、ものすごい雷雨となる。窓を閉め、部屋に灯りをつける。雨と雷の音を聞いていると心も落ち着いてくる。いい音楽だ。

先日書いた能に関する文章への加筆を始める。前回は簡単なレクチャーのためのメモ程度だったので、実際のレクチャーでは適宜言葉を補ったのだが、今回はその元原稿にチュッチェフやマンデリシュタームの詩を引用しつつ、盆踊りの話なども加えた。ロシア語で考えながら書くというのは昔は苦痛だったのだけれど、今回はなかなか楽しい。学術的な論文ではないからだろう。これに関連する研究書などに言及しつつ、さらに加筆すれば、研究ノートぐらいにはなりそうだが、今回はきりがないので、これぐらいにとどめておこう。

中央人形劇場発行の「奇跡の劇場」に掲載してくれるというけれど、一体いつ発行されるのだろう。最新号が2009年の1-2号だから、きっと2年後くらいなのだろう。

気がつけば、外が明るくなっている。もう午後9時である。結局今日は全然外出しなかった。でも、それなりに満足感。さて、夕食にしよう。
posted by masa at 02:33| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月13日

とてもJazz.ruな日

6月12日。毎晩寝汗がひどく、さすがに油じみてきたので、枕カバーなどを洗濯しているうちにお昼になる。休日のブランチはお粥が定番になってしまった。そしてヨーグルト。サインホから突然の電話。私の友達で会わせたい人がいるのだけれど、今日は時間があるかしら? ええと、今日はこれから出かけるのです。7時には帰宅しますから、8時にもう一度電話をください。分かったわ、じゃあ、また。お腹の様子を見てから出かける。

モシュコウ氏に教えてもらった音楽書・楽譜専門店に行くため、トヴェルスカーヤへ。途中、市などを眺めながら、ずんずん歩く。今日はものすごく暑い。道を行く人はみな半袖かTシャツ、ノースリーブ、短パン、サンダルなど、要するに薄着である。そのどれも持ってこなかった私は長袖のシャツを腕まくりし、汗をだらだら流しながら黙々と歩く。目的の書店にやっとたどりついたら、店に通じる階段に「ペンキ塗り立て」の札がかけてあり、通ることが出来ない。どっと疲れる。

仕方がないので、後日行く予定のギャラリーの場所を確かめるためにさらに先に行くこと10分。そのギャラリーはすぐに見つかった。しかし、ここは毎週金曜日しか開いていない、不思議なところで、もちろん今日は土曜日なので開いていない。帰国までに金曜日のチャンスは2回しかない。次は確実にスケジュールを立てよう。

レオンチェフ横町を歩く。人気がなく、静かである。暑いけれど、これなら我慢できる。記憶をたよりに横道に入ると書店ファランスチェール。日本では絶対に入手できない詩集を2冊購入。ここにはまた何度も足を運ぶことになるだろう。

通りを下ってトランシルヴァニアへ。ジャズ・ブラート岡島兄から依頼されていたCDを3枚見つけた。その他あわせて計7枚で1万円を越えた。希少CDは値段が高く設定されているのだ。このままでは資金不足になる。おそらくCDを買うのは後2回ぐらいになるだろう。今回購入したCDは主にジャズ専門誌「Jazz.ru」のレコード評に載っていたものだ。店のジャズ担当者があれもこれもと勧めてくれたが、ほとんど入手済みのものだった。

そのままクラブ作曲家同盟へ向かう。今日は「Jazz.ru」編集長のキリル・モシュコウ氏のプロデュースによる「New Sound」シリーズの日である。出演はアンサンブル・プリョート。ピアノ、ベース、ドラムという男性陣に女性ヴォーカルの4名によるアンサンブルである。ヴォーカルのナターリヤ・ブリノヴァがリハーサルのときはTシャツにジーンズというラフな格好で、いかにも若い娘さんが迫力ある歌を歌うのかと期待していたのだが、はじまってみると、なんとサラ・ボーンか!という金色でラメがピカピカのボディぴったりのドレス姿。しかもお腹がぽっこりだ。格好は歌とは関係ないが、歌い始めたら、これが全部英語である。歌そのものはいい。ニューヨークに行っても十分通じるだろう。

しかし、なんでモスクワにいて英語の歌を聞かなければならないのだ。と言いたいところだが、きっとこの方がお客に受けるのだろう。戦略的な問題なら、文句は言えない。バックの3人はとてもうまい。バンドとしては一流である。ピアノのグリゴーリイ・サンドミルスキイが特にいい。ソロをもっと聴きたい。しかし、3名はあくまで歌姫を盛り上げるべくひたすら演奏する。

全体としてはとてもいいジャズである。きっと人気が出るだろうな。と思いながら、だんだん眠くなる。リハーサルの雰囲気で、あ、これはお酒を飲みながら聞くジャズだなと思って、ビールを飲みながらビデオ撮影していたのだが、やっぱり「Jazz.ru」好みの気持ちのいいジャズで、本当に気持ちよくなって、眠くなったのだ。でも、頑張って最後まで起きていましたよ。

帰りがけにお礼の挨拶をすると、モシュコウ氏は明日からしばらくアメリカに行くとのこと。うーん、やっぱりアメリカを基準にジャズを見ているのだろうか。このあたりのことはまたの機会にじっくりきいてみよう。

まっすぐに家に帰り、簡単に夕食をすませ、今日購入したCDを聞いてみる。やはり「Jazz.ru」推薦だけあって、どれも気持ちのいいジャズである。サインホからは電話もないので、完全にくつろぎムードの大人のジャズ・タイムである。すると突然サインホから電話。もう9時だぞ。これから友達と赤の広場の花火を観に行くの。花火は10時開始よ。あなたも一緒に来なさいよ。え!花火? 見たいでしょ。じゃあ、ノヴォクズネツカヤで9時30分に会いましょう。あ、はいはい、分かりました。大急ぎで着替えて、出かける。待ち合わせ時間には、なんとか間に合った。

編集者で自作の詩を歌う歌手でもあるセルゲイとサインホがニコニコしながらやってきた。10分の遅刻である。世間話をしながら並んで歩く。歩行者天国というか交通規制をしているらしく、車が走っていない。路上を歩いて、モスクワ河まで来ると、あちらこちらに警官がいて、警察関係の車が河沿にびっしりと止まっている。赤の広場に向かおうとすると迷彩服を着た男に静止される。この先には許可された者しか行けない、しかも花火の開始時刻は11時だと言う。

しきりに謝るサインホ。いやあ、テロ事件の後だからしょうがないでしょう。じゃあ、もうちょっと歩いて、どこか花火の見えやすい場所を探しましょうということで、周辺をのんびり歩く。静かな通りで人気のない場所を通る。モスクワでもこうした静かな場所はあまりないという。とても気に入ったので、また来ることにする。しかし、まあ、まだ明るいとはいえ、どこもかしこも楽しそうな人々が路上でくつろいでいる。今日は「ロシアの日」という祝日だ。

どうもあまりいい場所がないので、地下鉄で車を止めてあるところまで向かい、そこからモスクワ大学に行って、花火のよく見える大学近辺に行こうということになった。しかし、地下鉄に乗る頃には、私は猛烈に眠くなっていたので、花火はあきらめて帰宅することにした。また連絡をとりあうことにしてサインホたちとは別れた。

帰宅し、CDの続きを聞いてみると、やっぱり「Jazz.ru」推薦盤。とてもとても心地よいジャズである。いろいろなことがどうでもよくなって、ビールを飲み始めていた。

----------------------------------------
"Новый Звук". Ансамбль Прёт
http://www.ucclub.ru/event/12-06-2010/17-00/
posted by masa at 06:06| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月12日

SAFETY MAGIC

6月11日。このところ気温が低く、しかも湿度が高いせいか、妙に眠い。今日も寝坊してしまった。慌てて中央人形劇場へ行く。朝食は何を食べたのか覚えていない。折悪しくちょうど地下鉄が混んでいる時間である。ストレスを感じつつ、車両の隅で本を読む。幼児向けの人形劇の脚本集である。読んでいるうちに気持ちが少し落ち着いてくる。

人形劇博物館が静かだ。スタッフがほとんどいない。そろそろシーズンオフで出勤日も減っているらしい。なんてお気楽なんだ。男性職員二人だけがなんだか忙しそうに働いている。そして、私も仕事の続きである。

中央人形劇場はこれまでに5回来日公演を行っているが、その最後が1990年で、今日はその関係資料を調べる。長野公演の際に実行委員会の人々が発行した「ペレストロイカの人形劇」という新聞が出てきた。読んでいると、この公演で様々な人が出会い、ものすごく盛り上がったことが分かる。長野公演で感動した実行委員会の数名が帰国する劇場の人々を見送ろうとわざわざ仕事を休んで新潟空港まで来た話もすてきだ。

地方都市では、長野の他に長岡、柏崎、六日町でも公演している。当時のことを覚えている人がいるかもしれないので、今度長岡の知り合いにきいてみよう。

結局、今日も300枚以上の画像を撮影した。残りの資料は2箱なので、あと1日で必要な資料の撮影は終わるだろう。その次もまだいくつか調査しなければならないのだが、とりあえず劇場での目的の大部分はうまく果たせそうだ。

早めに仕事が切り上げられたので、昨日の演劇専門書店にまた立ち寄り、レゾ・ガブリアゼに関する本を買う。彼の談話がたくさん掲載されていて、すごく面白い。ガブリアゼの人形劇がすごく観たくなる。

いつものスーパーに寄り、チーズその他を買い、帰宅し、軽く食事をし、メールチェックをする。急ぎの仕事の依頼はない。一安心。キリルに明日のライブについて問い合わせのメールを書き、再び外出する。

今夜のドムは SAFETY MAGIC というグループのライブである。CDは持っているのだが、生で聞くのは初めてなので、期待していたのだ。ベース2名、キーボード、ドラム、パーカション、アルト・サックス、トロンボーン、横笛、デジュリドゥという大編成である。おそらく竹製の横笛を複数持ち替えて吹く人が主旋律を吹き、ベースとキーボードが副旋律を奏で、ディジュリドゥがアクセントをつけるという基本パターンである。リズム・セクションがしっかりしているので、メロディ系の楽器はかなり好きなように演奏する場面もあったが、基本的には同じメロディとそのヴァリエーションの繰り返し。時々、チベット語のような言葉で全員で歌ったりもする。

ひたすら気持ちのいい音楽である。だから、だんだん眠くなる。あまりにも眠いので、途中で帰ろうと思ったら、8歳ぐらいの少女が会場の隅で(と言っても私が撮影しているビデオカメラの前で)曲に合わせて踊り出した。彼女のお姉さんやお母さんらしき人も踊り始めた。この少女のダンスが絶妙で、本格的に習っているかもしれないが、ステップがすごくいい。開場前からいたのでミュージシャンの一人の娘さんらしい。きっと日頃からお父さんの音楽を聴いているのだろう。彼女のダンスを見ているうちにすっかり目が覚める。そうか、これはじっと聞くのではなくて、踊るための音楽だったのだな。

帰宅する途中の路上で、どうしても気になっていたものを買った。サクランボだ。毎日見ているうちに、無性に食べたくなったのだ。40個ほど買い、帰宅するとすぐ食べた。美味しかった。ウズベキスタン産とお店の札には書いてあったが、こんなサクランボがたくさん実っているウズベキスタンの風景を見てみたいなと思った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

SAFETY MAGIC
http://www.dom.com.ru/event/2010/06/11/

Safety magic Крутушка
http://www.youtube.com/watch?v=J3KudALJQjg&feature=player_embedded

Safety Magic (live in KEKS)
http://www.youtube.com/watch?v=q2quaiW0ZYU&feature=player_embedded
posted by masa at 06:05| Comment(0) | モスクワ日記2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。