6月27日。朝から掃除機をかけ、床をぞうきんがけする。最後の洗濯もする。いやあ、きれいになった。すっきりした。
いよいよ明日の帰国を前にして、日本へのおみやげを買いに行くとにする。ルイノクとも思ったのだが、手っ取り早くおみやげを買うなら、やっぱりよく知っているヴェルニサーシュだろう。ということで、イズマイロヴォに向かう。よく知っていると言いつつ、間違えてイズマイロカヤ駅で降りてしまった。公演でくつろぐ人々の姿がホームから見える。本当はあんなふうに日陰でのんびり過ごしたいのだが…。再びパルチザンスカヤへ引き返す。
イズマイロヴォのヴェルニサーシュはいつも通りの賑わいである。入り口付近のDVDショップで「陽気な連中」と「ヴォルガ・ヴォルガ」を買う。モノクロ映画に彩色したもので、気になっていたのだ。いくつか店を横目に見ながら、昔風のマトリョーシカを売っている店で立ち止まる。気に入ったデザインのものがあったので、店の若者にいくらだときくと900ルーブルだという。高いよ。じゃあ、いくらなら買うのか値段を言ってよ。700でどうだ。いや、750。しょうがないか。もう少し安く言えばよかった。750で購入。
似たような品物しかない中でもたまにいいものもある。アルハンゲリスクの幸福の鳥が軒先に吊り下げられている店があった。面白い絵が描かれた木の器が並べられている。スコモローヒの絵が描かれた皿と三人姉妹の絵が描かれた器が気に入って、どちらか迷うが、結局、三人姉妹と幸福の鳥を買う。しめて2,000ルーブル。高いが、妥当だと思う。その他いくつか買い込み、予定の予算をオーバーしたので、帰ることにした。
一端帰宅し、水をガブガブ飲み、軽く食事をし、一休み。メールなど書く。先日送ったメールに今頃ミーシャから返事が届く。かなり田舎にいて、メールチェックができなかったという。急かすから、無理につくったDVDのコピーを渡そうと思っていたのに、田舎に行くのなら事前に言ってほしいものだ。DVDは友人に託すことにした。
午後7時、ドムへと向かう。今日はマルトゥイノフのコンサートだ。新譜の「イーリアス」の発表記念と新刊本の発表記念を兼ねたコンサートのはずだったが、「イーリアス」はジャケットのデザインがまだ終わっていないためリリースされていないし、本の方も出版が遅れているという。前倒しの記念コンサートということになってしまった。CDと本を手に入れるのを楽しみにしていたのに、とても残念だ。
マルトゥイノフというのに、今日はお客が少ない。もうみんな夏休み体勢なのだろう。コンサートの前にマルトゥイノフが新作のコンセプトについて長々と話すが、ほとんど理解できない。マルトゥイノフの本もそうだが、彼の考えも表現も難しくて、何度も読まなければ理解できない。その場の話なんか全然分からない。でも、分からないなりに面白いので、それでいいのだ。
映像を流しながら演奏するという。ピアノの演奏が始まる。いつものように同じフレーズの繰り返し。微妙な変化。さて、映像は? なにやらシミのようなものがぼんやりと映っている。何も動かない。シミのままである。映像は後から流すのかな。演奏は続く。どう表現していいのか難しいのだが、メロディーの反復と増幅、音の差異と連続がとても気持ちいい。映像の方はというと相変わらずシミのままだが、かすかにその模様がはっきりとしてきている。演奏はさらに続く。譜面もなしに、この連続はすごい集中力だ。しかも早いパッセージ、ピアノフォルテの連続。筋力もすごいのだろうなあ。気がつくと映像がはっきりしている。どうやらレンガの壁である。先ほどのシミは壁をアップにしていたので、ぼやけていたのだ。カメラがひいていくにしたがって、壁の様子がどんどんはっきりしていく。演奏は続く。カメラはどんどんひいていく。だんだん巨大な壁であることが分かっていく。演奏は続く。巨大な壁は巨大な建造物であることが分かってくる。塩蔵は続く。巨大な建造物はなにやらとても不自然な異様な代物であることが分かってくる。演奏は続く。ある一つの建物の部分を切り取って、それを横に反復した合成映像であることが分かる。演奏は続く。どこまでも反復する強大な建物の壁。上下の白い空間がどんどん広がり、やがて地平線の中に完全に消えてなくなり、真っ白になる。演奏の音は休符が増え、だんだんと消えていく。
1時間余の演奏。すごい。
昨日の偽チベットのマントラよりも、よほど祈りに近い、荘厳な構成だった。ほとんど生音に近い演奏で、ピアニストの力量がはっきりと分かる。曲も演奏も実にすばらしい。CDがリリースされるのが楽しみだ。マルトゥイノフの本もしっかり読まなくちゃ。
モスクワ最後の夜をマルトゥイノフで締めくくることができて、私は実に幸せである。
明日は朝から荷物の整理をし、午後3時にアパートを出発する。100枚近く入手したCDとDVDをどう整理するか頭が痛い。明らかに重量オーバーだろう。まあ、なんとか対処しよう。
日本に帰れば、また書類と会議と授業に追われる日々である。このブログも当分書き込むことはないだろう。毎日日記が書けるということは、それだけ生活にゆとりがあるということなのだと思う。「忙しい」という愚痴が書けるだけでも幸せだろう。愚痴を書く暇もない、まるでゆとりのない生活っていったい何なんだろう。ああ、帰国するのが恐ろしい。
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Вернисаж в Измайлово
http://kremlin-izmailovo.com/Souvenir-MarketПрезентация книги Владимира МАРТЫНОВА "ВРЕМЯ АЛИСЫ"
http://www.dom.com.ru/event/2010/06/27/